誰かが君に恋してる
低い雲に息が白くなるほど寒かった冬が去りつつあるこの頃
私を満たし温めてくれる君との別れが近づいていることを教える春の気配。
君と出会ったのは去年の春、新学期が始まったあの日。
その日見た君の笑顔に特別感情を抱かなかったが、今日に至っては私のエンジンナセルのような存在であり、私の生きる意味の一つである。
私が君に恋をした時、君の目には大きなステージの上で合唱コンクールの結果を発表する人を照らし写す光を反射した一粒の水滴がこぼれていた。
君は人一倍その行事に熱心に取り組み、絶望的であったクラスの合唱を先導し、ピアノから発せられる音を指揮した。
練習では真剣な表情で手を叩きリズムをとったり、上手くいったのときは笑顔で褒め、時には怒りをあらわにし不真面目な男子を指導した。
私は君の豊かな感情を知り、会場中から聞こえてくる拍手の音に包まれながら頬に落ちた一滴の涙を手で拭った時、君に恋をしたのだ。
それからの日々は幸せという二文字に尽きるような日々だった。
ただ近くにいるだけでも良かった、君と話しているときはこれが永遠に続くことを切に願った。
人を好きになるきっかけは人それぞれ違えど、その時抱いた感情に違いはない。
Someone to watch over you.
誰かが君に恋してる。